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120年ぶりの民法大改正~中小企業にも大きな影響~

2015年08月01日

category : 福耳通信 @三宅 真弥

民法(債権関係)を改正する法案が今国会に提出され成立の予定です(平成27年6月15日現在)。なお、実際の施行は平成30年からとなりそうです。この改正は、1896年の民法制定以来、実に120年ぶりの大改正であり、改正項目は200項目に及びます。特に短期消滅時効の廃止や法定利率の引下げ、個人保証の制限など中小企業にも影響のある大きな改正が盛り込まれています。

1.改正の目的
~国民にわかりやすい民法へ~
今回の民法改正には、大きく2つの目的があります。
一つは、法律の専門家以外でも読みやすい条文にして、国民にとってわかりやすく整備するとともに、争いの多い事項、例えば賃貸借契約における「敷金」の規定などの明文化が図られます(敷金については後述)。
もう一つは、国民生活や時代等の変化に対応して、内容の実質的な変更などが行われます。

2.消滅時効
~原則5年に統一~
一定期間の経過によって債権等の財産権が消滅する制度のことを「消滅時効」といいます。現行民法では、債権の消滅時効を「10年」とするとともに、業種ごとに異なる短期消滅時効(飲食店1年、小売店2年、医師3年など)がありましたが、以下のように改正されます。

●消滅時効の改正法案
・債権者が権利を行使することができることを知ったとき(支払期限がきたとき)から5年
・(債権者が知らなくても)権利を行使することができるときから10年(現行民法と同様)
・業種ごとに異なる短期消滅時効の規定の削除(商事時効を5年と定めた商法第522条も削除)

一般に債権者が「債権が発生したとき(=権利を行使することができる)」を知らないことは考えづらいため、消滅時効は原則5年に統一されます。

3.法定利率の引下げ
~まずは3%に~
法定利率(当事者間で利率について合意がない場合の利率)が大きく変わります。従来、民事5%、商事6%だった法定利率が民事、商事ともに、まずは3%になります。
この金利は固定ではなく、市場金利の変動を踏まえて3年ごとに見直されます(当初3%+変動利率)。

4.(連帯)保証の制限
個人保証について、保証(連帯保証の場合も同じ)が制限されます。
具体的には、経営者ではない個人(第三者)が事業のための借入(主債務)の保証人になる場合は、保証契約締結の1ヶ月前以内に作成された公正証書において「自分は保証債務を履行する意思がある」旨を表示することや公正証書作成にあたり一定事項を公証人に口授するなどの条件を満たさなければ、保証債務の効力が生じないことになります。
※保証の制限については、次月号で取り上げます。

5.定型約款
事業者が不特定多数の者と取引する際に用いる定型的な契約条項を約款といいます。
インターネット通販などを利用する際、約款を読まずに「同意します」をクリックしてしまうことがよくあります。このような時の約款について、新たに「定型約款」という規定が設けられます。

●「定型約款」とは…
定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手として行う取引であって、その内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的なもの)において、契約の内容とすることを目的として特定の者により準備された条項の総体をいいます。

(1)定型約款の「みなし合意」
この定型約款の「個別の条項」を契約の内容にするために「みなし合意」の規定が設けられ、例えば、インターネット通販において、定型約款が契約内容であることを事業者が明示していれば、相手が約款を理解していなくても「同意します」をクリックすれば、正式に契約したものとみなされます。

●「みなし合意」の条件
1.定型約款を契約内容とする旨の合意をしたとき
2.定型約款を準備した者があらかじめその定型約款を契約内容とする旨を相手に表示していたとき

(2)相手方の利益を一方的に害する条項は無効
一方で、「みなし合意」を無条件で是認すると、例えば、「当社はいかなる事情があっても一切の責任を負いません」という条項を定めた会社が、意図的に注文品と異なる粗悪品を送付した場合でも、法的責任を追及できないことになり、明らかに正義公平に反します。
そのため改正法案では、相手方の利益を一方的に害するような規定は信義則違反として無効になります。これは、定型約款の相手方の不意打ちになる条項等を除外するためです。
また、次のような場合は、契約後に事業者の判断(相手方の合意なし)で定型約款を変更することが可能です。

●定型約款が変更できる場合
1.相手の利益になる場合
2.契約目的に反しない合理的な場合(事業者にとって必要な場合)

6.敷金
前述した賃貸借契約における敷金について、「単に経年変化による傷みだけの場合、補修費用分を敷金から差引くことはできない(補修費用は大家の負担)」ことは法解釈上、当然なのですが、民法に明文規定がありませんでした。
改正法案では、単なる経年劣化は借り主に修理義務なし、敷金は借り主に原則返還することなどが明文化されます。
※改正民法は、平成30年からの施行になります。

<民法改正の主なポイント>

現在 改正法案
消滅時効 ・民法の原則10年・業種によって消滅時効がばらばら 原則5年に統一
法定利率 5%の固定制 当初3%の変動制(3年ごとに見直し)
個人保証 第三者である保証人が自己破産する例が多数 公証人による確認手続き等が必要
約款 明文規定がなく、位置づけがあいまい ・みなし合意により、「クリック注文」も正式契約・相手方に不利益なものは無効
敷金 通常の使用による損傷及び経年劣化について明文規定なし 経年劣化は借り主に修理義務なし、敷金は借り主に原則返還などを明文化

 

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